言語聴覚士とは何か、まずは基礎知識を紹介します。言語聴覚士は幅広い領域で活躍する専門職です。
人と人とのコミュニケーションは言葉を通じて行われます。その際は言語、聴覚、発声、発音などの機能を用いることになりますが、病気や事故、発達上の問題などで十分に機能が備わっていない人もいます。言語聴覚士はそういったコミュニケーションの問題がある人に対し、専門的な技術を活かして支援する専門職です。言語によるコミュニケーションの問題は、失語症や聴覚障害、音声障害など様々な理由で生じます。これらの問題の本質やメカニズムを明らかにして、対処法を見出すための検査を実施し、その内容に応じて訓練・指導を行います。
言語聴覚士は、言語障害、高次脳機能障害、音声障害、構音障害、嚥下障害、聴覚障害などに対応します。言語障害は、上手く話せない、話が理解できない、文字が読めないといった症状が現れます。高次脳機能障害は、忘れやすく思い出せない事象が多い、集中して物事に取り組めない、複雑な手順が理解できないといった症状です。音声障害は、声が出にくい、かすれる、小さくなるといったものです。構音障害は、発音に問題がある状態を指します。嚥下障害は、噛む・飲み込むといった動作に問題がある状態です。聴覚障害は、声が聞き取れない、何度も聞き返すといった症状が現れます。
言語聴覚士が実施するリハビリは医師や看護師、理学療法士、作業療法士、ケースワーカー、介護福祉士などの専門職と連携して行います。医療だけでなく、介護、福祉、教育などの幅広い領域で活躍し、各現場で重要な役割を担います。言語聴覚士は1997年に国家資格に認定され、毎年約1,600人~2,000人が合格しています。2023年3月の時点で、有資格者の数は4万人近くまで増えています。
言語聴覚士の必要性は1960年代から議論されていました。1971年に国立聴力言語障害センターに専門職養成所が設置されたことをきっかけに、言語聴覚士の養成が本格的にスタートしました。その後、高齢化社会になったことで言語聴覚士の必要性はさらに増し、国家資格化が早急に求められるようになり、1997年12月の国会で正式に国家資格に認定されたという歴史があります。1999年に1回目の国家試験が行われ、その際は約4,000人が合格しました。また、2000年には学術・職能団体として日本言語聴覚士協会が設立され、2009年には一般社団法人になっています。
言語聴覚士の国家資格を取得するためには、まずは指定の学校に通い受験資格を得る必要があります。資格を取得するまでのルートはいくつか用意されているので、自分に合った方法を選んでください。なお、通信教育のみでは取得できません。
訓練・指導の内容について、対応する障害ごとに紹介します。例えば、食べ物を噛む・飲み込む動作に問題が生じる嚥下障害に対しては、食事機能の維持や回復に向けた訓練を行います。病院で働く場合、この嚥下障害に対応することが多くなります。
言語聴覚士とはどのような仕事か、大まかな概要やこれまでの簡単な歴史を紹介します。言語聴覚士が実施するリハビリは様々な専門職と連携して行います。需要は年々伸びており、有資格者の数は現在までで4万人近くに増えています。